生活指導

生徒の抜け出し対応

授業中、また学校にいるべき時間に生徒がどこにも見当たらないということがあります。そういった際は、「お手すき」の教員総出で生徒を校内、学校近隣に捜索に出ます。万が一のことがあった時のために、一刻も早い発見が求められるのです。

確かに、万が一のこと(どこかで倒れている、最悪飛び降りなど…)が頭をよぎるため、教員たちは他の生徒に察されないように必死に探します。運良く見つけることができれば、その後事情聴取、保護者への連絡、必要であれば指導などを行います。

ほとんどの場合校内で見つかることが多いのですが、ここでは私が以前勤めていた学校で経験した事例を紹介します。

授業中に生徒が保健室へ行くといい、教室を出たきり戻ってこないということがありました。保健室にもいっておらず、校内で見かけた先生もいませんでした。そもそも体力、精神的に不安定な生徒だったため、授業担当の先生は気になり、ちゃんと保健室に行っているか確認をしたものの、行ってないことが発覚し、その後教員総出で学校中を探しました。放課後になっても見つからず、近隣の公園やファミレスなどを探すも一向に見つかりません。

生徒の荷物は学校に置いたままなので、校内にいそうな気もするのですが、高校の施設はかなり広いため、探すのにはかなり労力を要します。とっくに退勤時間も過ぎ、あたりは真っ暗。保護者に連絡を入れるも、まったく連絡がつきません。捜索願いを出すかと管理職は検討し始めます。

20時頃、生徒が見つかりました。教員総出で探している中、知らない間に校門の前に立っていたようです。生徒の様子はというと、ぼーっとしており呼びかけに答えません。荷物が欲しいという素振りを見せるので荷物を返すと、そそくさと帰宅しようとします。

事情を聞かないことには今後の対応も図れないため、なんとか声をかけ続けますが、本人は何も話そうとしません。無理矢理引き止めることもできず、その日は帰宅させました。

結局、こういった出来事があったにもかかわらず、今後精神的なケアを続けていくこと、教員は当該生徒に対して慎重に接すること、授業中であっても気配りを怠らないことなどが教員間で共有され、翌日から何事もなかったかのように通常の授業が始まりました。生徒本人も通常通り登校しています。

根本的な解決には至っていませんが、こういった生徒には学校のような居場所が必要だという考え方のもと、排除せず、寄り添い、受け入れていくことを学校は選択します。

こういった対応が正しいのかどうかは私には判断できませんが、生徒に寄り添う姿勢は大事だと思います。しかし、こういった業務の特殊性を管理職や文部科学省が教員の善意に頼りきりな部分に大きな疑問を持つのです。

なぜなら、捜索時間6時間程の間、6時間分の業務ができていません。生徒発見後に手をつけられなかった業務を行うことになるのです。残業代、手当、振替もつきません。

こうなると、教員の中にも生徒のためとはいえ、こんな割に合わないことやってられないと思う先生も出てくるのは当然だと思います。勤務時間も終わっているため、有志のみでの捜索になりますし、生徒発見前に帰宅する先生も半数ほどいます。

緊急時には管理職判断で職員に命令を出し、せめて振替がつくように仕組みが整うべきだと思うのですが、教育委員会は現場の管理職にそこまでの権限を与えたがりません。

生徒のことを思い、捜索をしたり生徒に寄り添い続ける姿勢を教員が貫き続けるためにも、教員の善意に甘え続けている管理職や教育委員会、文部科学省は、何かしら手を打つべきだと考えます。